この年の収穫は通常以上に入念に選果作業に徹し、時間も掛かりましたが、シャトー・マルゴーのワインを特徴づけるピュアなアロマを最大限に引き出すためにも決して手の抜けない作業でした。赤ワイン用ぶどうの収穫は9月11日にメルロの区画からスタート。カベルネ・ソーヴィニヨンの主要区画は9月22日に収穫しています。収穫最終日は10月5日でした。
シャトー・マルゴー2023年ヴィンテージは、精緻な仕上がりと高い複雑性、そして上品さが印象的です。収穫全体の41%をグランヴァンが占めています。濃縮感では前年ヴィンテージに及びませんが、アロマのタイプやタンニンのなめらかなテクスチャーには共通点が確認できます。9月に雨に降られた直後に我々が抱いた予想をある意味上方修正する仕上がりです。偉大なるテロワールは環境の変化に的確に順応し、テロワールの魅力をもってワインをさらに輝かせる… またしてもテロワールが見事に本領を発揮したヴィンテージです。
シャトー・マルゴーのアッサンブラージュは、主要品種に変わらずカベルネ・ソーヴィニヨン(89%)を用い、その他の品種比率は以下のとおりです。メルロ(5%)、カベルネ・フラン(4%)、プティ・ヴェルド(2%)
Margaux
気象条件
2023年の冬は、2月上旬に10日ほど冬らしい寒さを観測したほかは、総じて暖かい天候が続きました。それに加えて、2023年はじめ数ヶ月の降水量はマルゴーにおいても196ミリほどで、厳しい暑さと乾燥が続いた2022年以降、地下水位は低いままで、地表付近の帯水層を若干満たすにとどまりました。以上のような状況のもと、ぶどう畑では4月3日から10日にかけて萌芽を迎えています。
春はヴィニュロンにとって大敵ともいえる遅霜の被害にあうこともなく過ぎ、続くぶどう樹の生長期には頻繁に雨が降ったとはいえ、降水量自体はさほど多くはありませんでした。6月に入ってようやく、2週間ほどで72ミリという本格的な雨を記録しています。同時に、畑の衛生状態を健全に保つ作業にも苦戦を強いられ、大気中の湿度が上昇するとともにベト病の発生リスクも高まりました。果実の順調な成熟と上質なぶどうの収穫を目指して、畑では特に葉部分を衛生的に保つための作業に注力しました。開花は5月31日から6月5日にかけて観測され、花ぶるいや部分的不結実(ミルランダージュ)が生じることもなく順調に進みました。
2023年ヴィンテージは、特に気温において前年との違いが顕著な年でした。2022年は早い段階から酷暑に見舞われましたが、2023年でいわゆる猛暑日となったのは8月17日から24日の期間のみです。ただ、この時期はぶどうの果皮が薄まる時期でもあり、ぶどう房は高温と日光照射の影響を受け易くなります。強すぎる直射日光を浴びた粒は日焼け(エショダージュ)を起こし、収穫時の選果については通常以上に入念に行なっています。