難しいヴィンテージこそ、何が起ころうとも偉大なテロワールがその驚くべき卓越した力を示してくれます。その偉力すべてを知ることはできませんが、2013年もこの法則どおりでした。そのひとつに早熟性が挙げられます。シャトーの最良区画に育つカベルネは、メドックで最も早熟な区画であり、急きょ始まった収穫の前にはすでに、高レベルな熟度に達していました。理想的な熟度に達するにはわずかに4、5日足りない程度でした。その他の理由は、これからもずっと謎かもしれません。偉大なテロワールの特異性を見抜くことは容易ではないのです。
どんな状況に立たされても、秀でた区画にあるカベルネはすべて例外なく、とても上質なワインを生み出すことができます。他を超越していることは明らかなので、シャトー・マルゴーのブレンドは迷うことなく決定しました。シャトー・マルゴーは赤ワイン用収穫の38パーセントを占め、例年どおりの生産量と言えます。一方ぶどう品種の割合は、例年と異なります。94パーセントがカベルネ・ソーヴィニヨンと、これまでにない高い比率です。そして5パーセントがカベルネ・フラン、1パーセントがプティ・ヴェルドとなり、メルロはブレンドにまったく加えませんでした。細心の注意を払って収穫したにもかかわらず、メルロは最良区画ですら期待に添う結果が得られなかったからです。
つまり、カベルネが際立つワインになると予想されるでしょう。その点に間違いはないのですが、私たちが想像するものとは少し異なるかもしれません。なぜなら、マルゴーのカベルネが充分に熟した時、メルロの特徴ともいえるバランスの良さと甘みを併せ持っていたからです。そしてもちろん、このテロワールならではの繊細さや魅力に満ちています。
シャトー・マルゴー2013年は偉大なヴィンテージであるという強気なことは言いません。私たちはこのワインが困難な状況下で生まれたことを知っているからです。とはいえ、私たちは21世紀の初めに、現在でき得る限りの配慮と入念さ、尽力をもって、このヴィンテージの誕生に携わるという大役を任されました。シャトー・マルゴー2013年の存在は、こうした努力の証となるでしょう。(2018年10月)
Margaux
気象条件
冬の終わりや春の気温が極めて低かったため、芽吹きは遅れ、開花期も平年より15日ほど遅く訪れました。また、これらの時期はずっと降雨量も多かったため、開花はもどかしいテンポで進み、結実状況も厳しく、特にメルロ種はミルランダージュ(結実不良)が蔓延し、不結実も多く見受けられました。後者の現象は、カベルネ種については被害がより少なかったと言えます。ただ一挙に、2013年ヴィンテージは生産量が期待できない状況となってしまいました・・・。
幸いにも、夏の日照りのおかげでブドウの生育の遅れを幾分取り戻すことができ、色付き期は開花期ほど不揃いにはなりませんでした。おそらく少量のブドウだったからこそ、生育の遅れを調整できたのでしょう。9月初旬は、少ない収穫量とはいえ、素晴らしい状況でブドウが熟していくであろうと期待は高まりました。
9月は、比較的乾燥していると同時に雨量も多いという、不可解な天候でした。頻繁な小雨は、大雨を誘発することなく、程よい雨量をやや上回る程度で収まりました。9月末までは特に収穫に影響を及ぼす気象状況ではありませんでしたが、突如、灰色カビ病が進行したため、収穫開始を早めました。とはいえ、最終的にはブドウの理想的熟度に達するのに1週間ほど足りない程度で、偉大なヴィンテージへの望みは絶たれたものの、すべての見込みが失われたわけではありませんでした。
白ワイン用ブドウ品種の収穫は9月19日から27日、赤ワイン用ブドウ品種の収穫は9月30日から10月11日にかけて行われました。