パヴィヨン・ルージュは、2023年ヴィンテージにもこれまで同様に厳しい選別基準を課しており、収穫全体の30%を占めています。
シャトー・マルゴーでは2016年以降、継続的にぶどう畑の再編整備を実施しています。優れたテロワールを有する秀逸区画であっても、グランヴァンの原料としては現時点では若過ぎる場合もあります。それでも、畑再編の成果は着実にあらわれており、一部はパヴィヨン・ルージュに使用されるまでに生長を遂げています。
シャトー・マルゴーのグランヴァン同様、パヴィヨン・ルージュ2023年も、香り表現やなめらかさにおいて極めて精緻な仕上がりです。カベルネ・ソーヴィニヨン(79%)を主要品種として、味わいの瑞々しさと余韻の長さがとにかく印象的です。その他の品種比率は以下のとおりです。メルロ(14%)、カベルネ・フラン(2%)、プティ・ヴェルド(5%)
Margaux
気象条件
2023年の冬は、2月上旬に10日ほど冬らしい寒さを観測したほかは、総じて暖かい天候が続きました。それに加えて、2023年はじめ数ヶ月の降水量はマルゴーにおいても196ミリほどで、厳しい暑さと乾燥が続いた2022年以降、地下水位は低いままで、地表付近の帯水層を若干満たすにとどまりました。以上のような状況のもと、ぶどう畑では4月3日から10日にかけて萌芽を迎えています。
春はヴィニュロンにとって大敵ともいえる遅霜の被害にあうこともなく過ぎ、続くぶどう樹の生長期には頻繁に雨が降ったとはいえ、降水量自体はさほど多くはありませんでした。6月に入ってようやく、2週間ほどで72ミリという本格的な雨を記録しています。同時に、畑の衛生状態を健全に保つ作業にも苦戦を強いられ、大気中の湿度が上昇するとともにベト病の発生リスクも高まりました。果実の順調な成熟と上質なぶどうの収穫を目指して、畑では特に葉部分を衛生的に保つための作業に注力しました。開花は5月31日から6月5日にかけて観測され、花ぶるいや部分的不結実(ミルランダージュ)が生じることもなく順調に進みました。
2023年ヴィンテージは、特に気温において前年との違いが顕著な年でした。2022年は早い段階から酷暑に見舞われましたが、2023年でいわゆる猛暑日となったのは8月17日から24日の期間のみです。ただ、この時期はぶどうの果皮が薄まる時期でもあり、ぶどう房は高温と日光照射の影響を受け易くなります。強すぎる直射日光を浴びた粒は日焼け(エショダージュ)を起こし、収穫時の選果については通常以上に入念に行なっています。