ポール・ポンタリエへの弔辞

ポール、33年前にあなたと初めて出会った時のことをこれからもずっと思い出すでしょう。自身がいかにすばやくシャトー・マルゴーを成功に導くことのできる資質を持っているか、冷静な口調で説明するあなたの姿を私は唖然としながら観察しました。あなたが27歳で、まだプロとしての経験がまったくなかった頃です。数々の素晴らしいディプロムだけでなく、結局私を惹きつけたのは、この果敢さでした。私自身もまだ30代でした。あなたがこれほど人望を集めることになろうとは、当時どうして想像できたでしょう?マルゴーには今週初めから多くのメッセージが届いており、すべての人々が認めるあなたの偉大な素質について再び触れるつもりはありませんが、ひとつだけ付け加えたいと思います。たとえ問題があったとしても、あなたがいてくれれば解決できそうな、そもそもあなたがいてくれたからこそ、問題は一度も起こらなかったとも言える、要するにあなたの賢明さは、あなたが示してくれた偉大な経験でした。33年間、私たちはすべてを分かち合いました。結婚、別れ、再婚、子供たちの誕生。そして文学や歴史、ともに出入りしていた社交界と、私たちの共通の関心について言及はしませんが、ただひとつ、まったく合わなかったのは音楽の趣味だけです。昨年、よく考えたわけではなく、ただ率直に、あなたは並外れて素晴らしい人物であると伝えることができたのは幸いでした。そして、「恐れ入ります。ご存知のように、私は所有者の立場に立ってマルゴーのお世話をしているのです。」という、いつも通りの慎み深いあなたの言葉が今もなお耳に残っています。そしてこれこそ、あなたの本質的な力です。マルゴーへの愛、あなたとともに私も分かち合うことができた愛情と情熱。思い起こせば、毎夏ギリシャで過ごしている時、ブドウの状況を説明しようと、頻繁に電話がかかってきました。そして毎回、その年の収穫が素晴らしいヴィンテージになると予感させるような話しぶりでした。雨であろうと日照りであろうと、あなたは常に明るい見通しを示していました。今この場に、私たちシャトー・マルゴーのスタッフ一同が最期のお別れをするために集まり、あなたのまわりを囲んでいます。すでに引退した人たちも含め、多くの者が、心からあなたのことを崇拝しています。とはいえ、ひとつだけ、33年間でたったひとつだけ、お咎めを言わせてください。それは私やともに仕事をしてきたスタッフが、あなたのすさまじい苦しみにこれ以上寄り添うことはできないという罪悪感や、悲痛、苦悶に打ちひしがれているのに、私たちを道中に置き去りにして、先に旅立ってしまったことです。しかしながら私たちは、あなたが望むであろうことであり、また私たちもあなたに認めてもられることを願いつつ、あなたが遺してくれたすべてにおいて、今後も高みにたどり着けるよう力を尽くし続けるつもりです。18世紀の歴史を築いたベルロンのように、あなたはシャトー・マルゴーの魔術師として、今後も歴史の中に息づくことでしょう。